診療科・センター

脳卒中センター

脳卒中センターについて

脳卒中急性期の患者さんに高度な専門治療を提供する

 脳卒中(くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞)は日本人の死因の第3位を占め、勤労者医療においても重要な疾患です。

 当センターではこの脳卒中の主に急性期における高度専門治療を行います。

特色

 わが国における脳卒中による死亡順位は、癌及び心臓疾患に次いで第3位です。脳卒中には脳梗塞、脳出血、くも膜下出血が含まれ、わが国にける頻度は、脳梗塞が75.4%、脳出血が17.8%、くも膜下出血が6.8%と脳梗塞が圧倒的に多くを占めています。
 当院ではこれら全ての脳卒中の病型別に信頼性の高い科学的な根拠に基づいた治療を行い、成績の向上並びに合併症の軽減に努めています。

特徴

① 急性期脳卒中に対する十分な知識と経験を持つ医師(脳神経外科専門医、脳卒中専門医)を中心とするチーム医療の実践

図1

図1
ICU(集中治療室)での
初期治療例
rt-PA 静注療法後

図2

図2
ICU(集中治療室)での
初期治療例
開頭術後

 

 脳卒中センターでは重症の脳卒中の患者さんの初期治療はICUを主体として行っており、専門のチーム医療を行っています。開頭術後の全身管理や遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベーター(rt-PA)による血栓溶解療法などはICUにおいて24時間体制で厳重に行われます。

 従来は発症後3時間以内が適応であった脳梗塞に対するrt-PA静注療法が2012年8月より発症後4,5時間以内に拡大されましたが、「脳卒中治療は時間との勝負である。」ということは変わりありません。適切な脳卒中急性期治療を受けるためには、「脳卒中の発症に気づき、救急隊を呼び、治療可能な医療機関へ搬送してもらうこと」が重要です。

 

rt-PAによる血栓溶解療法の実例

図3 rt-PA投与前MRA 右中大脳動脈水平部で完全閉塞

図3
rt-PA投与前MRA
右中大脳動脈水平部(↑)で
完全閉塞

図4 rt-PA投与後MRA 右中大脳動脈水平部で完全開通

図4
rt-PA投与後MRA
右中大脳動脈水平部(↑)で
完全再開通

 

 図3、4に示すようにこの患者さんでは発症3時間以内にrt-PAによる血栓溶解療法が行われ、血栓の溶解に伴い良好な再開通が得られ、左片麻痺などの神経症状は速やかに改善しています。

 また、機能予後の悪い分枝粥腫型脳梗塞(BAD)に対し、多剤併用療法を行い良好な成績を得ています。

 抗擬固薬内服中の頭蓋内出血に対し、血液製剤(ワーファリンに対する第IX因子複合体製剤PCC)や拮抗薬(プラザキサに対するプリズバインド)を用いた積極的治療も行っています。

② MDCT、MRI、MRA、DSA(脳血管撮影)など診断と治療に関する全ての検査が24時間稼動可能な体制

図5 64列MDCT

図5
80列MDCT

図6 クモ膜下出血のCT画像

図6
クモ膜下出血のCT画像

図7 3次元立体CT脳血管撮影

図7
3次元立体CT脳血管撮影

図8 手術アプローチ方向からの観察

図8
手術アプローチ方向からの
観察

図9 血管撮影室でのカテーテル検査(DSA)

図9
血管撮影室での
カテーテル検査(DSA)

 

 脳卒中の初期診断を24時間稼動体制にあるMDCT(図5)やMRIで行います。クモ膜下出血(図6)や脳出血の症例では、従来CTで診断を行った後、血管撮影室に患者さんを移動し、カテーテル検査(DSA)(図9)を行っていましたが、現在は80列MDCT(図5)により脳卒中の確定診断後、CTの検査台から患者さんを移動することなく造影剤を静脈注射することにより3次元立体CT脳血管撮影(図7)が行えます。コンピュータにより3次元立体CT脳血管撮影像を一度構成すると、その後はあらゆる角度から脳血管を観察することが可能であり、破裂した動脈瘤などを速やかに発見することが出来、更には開頭術に於いて病変へアプローチする方向から自由に観察することも可能です(図8)。

 ただし、脳動静脈奇形などの複雑な形態をした血管性病変や病変の循環動態などの把握が必要な場合は実際にカテーテルを用いた脳血管撮影(DSA)(図9)を必ず行います。

③ 緊急開頭術に24時間対応可能な体制

図10 開頭術

図10
開頭術

図11 顕微鏡を用いた頭蓋内操作

図11
顕微鏡を用いた頭蓋内操作

 

 脳神経外科医、麻酔科医並びに手術担当看護師は待機当番制により緊急開頭術(脳内血腫除去術、脳動脈瘤クリッピング術など)にも24時間対応しています。

④ 入院当日ないし3日以内より早期のリハビリテーションの開始

図12 ベッドサイドでのリハビリテーション

図12
ベッドサイドでの
リハビリテーション

図13 リハビリ室での歩行訓練

図13
リハビリ室での
歩行訓練

 

 脳卒中では発症早期からのリハビリを行うことが奨められています。現在当院では発症当日ないし3日以内にリハビリテーションを開始しています。ひとりひとりの症状に応じて、ベッドサイドからリハビリ室での訓練まで、脳卒中急性期病院として必要なリハビリテーションを提供しています。

 また、栄養サポートチーム(NST)活動、嚥下機能評価(嚥下内視鏡検査)、摂食機能訓練を通して、発症早期からの適切な栄養管理と「食べる力」のサポートを行っています。